「手付かず」の森林は暴力の歴史を覆い隠していた
Nature Ecology & Evolution
2018年7月17日
一見して人間の手が加えられていないエクアドルの雲霧林は、人間がその地を何世紀にもわたって占有していたが、その居住がヨーロッパの植民地主義によって16世紀に断絶したという歴史を覆い隠していることを明らかにした論文が、今週掲載される。
19世紀の旅行者たちは、同国キホスバレーの雲霧林を「人類がこれまで一度も住んだことがない」ようだと述べている。しかし、Nicholas Loughlinたちは、この谷にある湖の土壌コアを分析し、それが必ずしも正しくないことを明らかにした。彼らは、コアから木炭や菌類、花粉を発見し、その谷には500年以上にわたって人が住み、作物を栽培し、土器を作り、火を焚いたことを示したのである。
居住の証拠は1588年頃に途絶えていた。土壌中木炭は、ヨーロッパ人の侵攻後のこの地域での戦闘の歴史記録と同時期に、広範な火災が発生したことを示していた。Loughlinたちは、以降の堆積物中の多くを雑草の花粉が占めていることから、その地が放棄されたと考えている。1718年までには、雲霧林に特徴的な花粉を産出する種が取って代わったことから、19世紀のヨーロッパ人旅行者たちがその景観を未開の地と誤認した理由が説明される。
この研究から、植民地の拡大が先住民に与えた破滅的な影響が目に見える生態学的な側面を有していたこと、また、新熱帯区森林の人間による占有の証拠が急激な再生によって急速に覆い隠され得ることが示唆された。Loughlinたちは、環境回復活動のための歴史的基準を知るには古生態学的研究が必要であると述べている。
doi:10.1038/s41559-018-0602-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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