CRISPRによる編集は、これまで考えられていたよりも不正確かもしれない
Nature Biotechnology
2018年7月17日
CRISPR-Cas9によるゲノム編集が、これまで認識されていた以上に、標的部位近くでの欠失や再編成を引き起こすことを明らかにした論文が、今週掲載される。この知見から、CRISPR-Cas9を利用してヒトの治療を行う場合には、ゲノム編集した細胞の塩基配列変化を詳細に調べ、監視しなくてはならないことが示唆された。
CRISPR-Cas9によるゲノム編集は、がんやエイズ、血友病、鎌状赤血球症といった病気の有望な治療法として大いに期待されている。Cas9は、ゲノム内の標的部位で細胞のDNA二本鎖を切断する。細胞はこのような切断を修復するが、その修復系は小規模なDNAの挿入や欠失を引き起こすことが多い。この過程は、病気の原因となる遺伝子を不活性化したり、遺伝子の変異を修正したりするために利用できる。これまでの安全性に関する懸念は、主として、意図した標的部位以外の部位でCas9がゲノムを切断するという、確率の低い原因から生じていた。
Allan Bradleyたちはマウスとヒトの実験用細胞株を調べて、CRISPR-Cas9が、二本鎖切断の修復に伴って生じることの知られていた小規模なDNAエラーに加えて、大規模な欠失や、場合によっては標的部位周辺の複雑な再配列を引き起こすことがあるのを見いだした。マウス幹細胞とヒト網膜色素上皮細胞では、これらの欠失が数千塩基もの大きさになる場合があり、隣接遺伝子や調節配列が影響を受けて細胞の機能が変わる可能性があることが明らかになった。
これらの知見が、Cas9の臨床応用にどのような意味を持つかは分かっていない。今回の実験は、標的遺伝子のノックアウト以外の染色体変化がもたらす有害作用を検出するようには設計されていなかったが、安全性への懸念が明確になったことから、今後さらなる研究が必要であることは言うまでもない。
doi:10.1038/Nbt.4192
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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