【がん】これまで知られていなかった経路で脳に侵入する白血病細胞
Nature
2018年7月19日
白血病細胞がこれまで知られていなかった経路で脳に転移することが、マウスの研究で明らかになったことを報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、急速な転移を特徴とする白血病の新たな治療機会を示している可能性がある。
急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、中枢神経系に転移することが多く、固形腫瘍からの脳転移の場合と異なり、ALL細胞が軟髄膜に分離される。軟髄膜ががん細胞の侵入部位となることはまれだ。中枢神経系への転移はALLのサブタイプに共通する特徴だが、こうした侵入の統一的な機構は同定されていない。
今回、Dorothy Sipkinsたちの研究グループは、ALL細胞が、椎骨または頭蓋冠の骨髄とクモ膜下腔の間を流れる血管の中を移動することを明らかにした。この移動には、ALL細胞とこの血管の基底膜との接触(ALL細胞上に発現するインテグリンを介する)が関係している。この相互作用を阻害すると、脳への転移が低下する。従って、ALL細胞は、神経細胞移動の経路探索時にたどった経路を選んだことになる。Sipkinsたちは、正常な免疫細胞と悪性の免疫細胞の相互作用と血管経路を探究すれば、中枢神経系への転移に関係する諸過程の治療のための複数の介入点が明らかになる可能性があると考えている。
さらに、Sipkinsたちは今後の研究で、この独自のALL輸送経路が免疫監視に関わっているのか、炎症過程に関わっているのかが判明する可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41586-018-0342-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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