【生物学】マウスの褐色脂肪とベージュ脂肪による熱産生を誘導する代謝産物
Nature
2018年7月19日
代謝産物の1種であるコハク酸が、これまで知られていなかった体温調節経路を介して、マウスの体温とエネルギー消費、体重増加に影響を及ぼすことが明らかになったことを報告する論文が、今週掲載される。
肥満は、エネルギーの摂取が消費を上回った時に生じる。増えた体重を減らすには、食べる量を減らして代謝に利用できるカロリーを減らす方法と、運動などによって燃焼されるカロリーを増やす方法の2つがある。また、カロリーは、ベージュ脂肪と褐色脂肪によっても燃料として消費される。白色脂肪はエネルギー貯蔵の役割を担い、肥満の場合に蓄積されるのに対して、ベージュ脂肪細胞と褐色脂肪細胞は、通常はエネルギー運搬分子が産生される過程の変動によって熱を産生するミトコンドリアを多く含んでいる。哺乳類の場合、これらの脂肪は、低温に対する体温調節に不可欠だ。この熱産生によってカロリーが燃焼されるが、必要に応じてベージュ脂肪と褐色脂肪を活性化させることは難しい。
今回、Edward Chouchaniたちの研究グループは、褐色脂肪のみに多く含まれ、低温で濃度が上昇する代謝産物のスクリーニングを行い、コハク酸を見いだした。コハク酸は、貯蔵エネルギーを放出する過程の中間産物で、震えのような筋肉活動によって血流中に放出され、そこからベージュ脂肪細胞と褐色脂肪細胞に吸収される。マウスでは、コハク酸がこれらの脂肪の局所温度を上昇させ、また、高脂肪食を与えた個体にコハク酸入りの水を飲ませると肥満にならないことが分かった。
同時掲載されるSheng HuiとJoshua RabinowitzのNews & Viewsでは、ヒトの場合にコハク酸を使ってカロリー燃焼を誘導できるかどうかを調べる研究は興味深いものになると指摘されている。また、HuiとRabinowitzは、これに関連するヒトとマウスの相違点、すなわち、体内で褐色脂肪とベージュ脂肪が占める割合はヒトの方が低く、加齢によっても低下することを強調して、「このことで、褐色脂肪での代謝過程の活性化によってカロリー消費を変化させられる範囲に制限が加わる可能性がある」と注意を促している。
doi:10.1038/s41586-018-0353-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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