キリスト教が速やかに拡大したのは、民衆の力ではなく強力な指導者の力による
Nature Human Behaviour
2018年7月24日
キリスト教は、より小規模な、政治的階層性のある社会において、極めて速やかに広まることを報告する論文が、今週掲載される。
キリスト教は今日、世界で最大の宗教である。しかしながら、その成功が、抑圧された人々に力を与えるメッセージによる草の根活動によって最もうまく説明されるのか、それともローマ皇帝コンスタンティヌスの有名な改宗など、影響力のある指導者たちを改宗へと導く布教の努力が大きな役割を担ったのかは、よく分かっていない。
Joseph Wattsたちは今回、キリスト教が受容される速さと最も強く関連する因子を見極めるために、16~19世紀における太平洋の70の島々の文化の転換に関する記録を分析した。豊富なデータセットと独自の方法によって、島々間の移動時間や島民間の歴史的な結び付き(文化的起源の共通性など)といった交絡し得る諸因子を考慮しながら、さまざまな島における人々の改宗の速さの比較が可能となった。
その結果、改宗速度の最も強い予測因子は、より強い政治的指導者層の存在と、より小さい集団サイズであることが明らかになった。一方、社会的な不公正の程度と改宗速度との間に有意な関連は見られなかった。この結果から、キリスト教が今回の調査対象集団において広まったのは、社会に力を与えるその教義のためではなく、指導者たちの影響のためであったと考えられ、また、観念は、小さな集団ほど速く広まることが示唆される。
関連するNews & ViewsではNicole Creanzaが、今回得られた知見は、文化がどのようにより広く発展していくのかを理解する上で役立つものであり、「集団サイズや政治的組織といった、集団レベルの特性の一端を知るだけで、ある観念が集団内に広まるかどうかを適切に予測できる確率が大きく高まる」ことを示していると指摘している。
doi:10.1038/s41562-018-0379-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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