気温上昇は精神的幸福感の低下と関連する
Nature Climate Change
2018年7月24日
米国とメキシコでは、毎月の気温が平年値を上回ると、精神的幸福感がわずかに低下し、自殺率がやや上昇するという関連性が存在することを報告する論文が、今週掲載される。
今回、Marshall Burkeたちの研究グループは、自殺に関する郡(米国)または市町村レベル(メキシコ)のデータとグリッド入り日平均気温・月平均気温のデータを統合して、解析を行った。その結果、月平均気温が摂氏1度上昇すると、月間自殺率が米国(1968~2004年)で0.68%上昇し、メキシコ(1990~2010年)で2.1%上昇したことが分かった。また、米国(2014~2015年)にジオコードされたソーシャルメディアの投稿6億件以上についても同様の解析を行い、月平均気温の上昇がツイッター上での抑うつ的な言葉の増加と関連していることが判明した。
気候変動がメンタルヘルスに及ぼす影響に対して懸念が高まっている。今回の研究結果は、気温と自殺の関連性を示す長期にわたる国スケールの証拠であり、この関連性はいろいろな地理的状況と社会経済状況を通じて一貫している。しかし、この結果を個別の自殺事例の説明に用いることはできず、気温上昇の影響が小さいことは、この他に自殺率全体に影響を及ぼすもっと重要な要因があることを示している。一方、この結果は、高温にさらされることと精神的幸福感の低下に関連があることを確かに示唆している。気候変動に対して何の対策も講じなければ、2050年までに、米国とメキシコの自殺者数が9000~4万4000人増える可能性があるとされている。Burkeたちは、今回の研究結果で、気温が自殺に影響を及ぼす理由の解明と今後の気温上昇を緩和する政策の実施に、さらなる弾みがついたと結論付けている。
doi:10.1038/s41558-018-0222-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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