半導体結晶の中に新たな準粒子が見つかる
Communications Physics
2018年7月27日
高品位の半導体結晶中に見つかった新しいタイプの準粒子(“collexon”と命名された)について報告する論文が、今週のCommunications Physics に掲載される。準粒子を含む材料は、独特な光学的特徴と特異な物理的性質を有しており、基礎科学と応用科学の両面で関心を集めている。
固体材料のような数多くの種類の粒子からなる微視的な複雑系では、それぞれの粒子の運動が複雑であり、こうした運動は、それぞれの粒子の付近を取り囲む粒子とのさまざまな強い相互作用の産物である。物理学者は、この複雑系の挙動と特性を調べる手段をこれまでより単純化するため、固体は自由空間中に弱く相互作用する粒子(「準粒子」)を含むものである、と考えるようになった。こうした「準粒子」には、さまざまなタイプがあり、それぞれが材料の特性に関する異なった手掛かりとなる可能性がある。
今回、Christian Nenstielたちは、窒化ガリウム系半導体結晶中の原子をゲルマニウム元素の原子に置換した。Nenstielたちは、この結晶の当初の構造を維持しながら、高濃度の原子置換を実現した。ただし、この原子置換を行うと、結晶の物理的性質が変化し、固体中の自由電子の濃度が高くなる。次に、この特殊処理された結晶による光の吸収と放出の分析が行われ、電子ガスの濃度が上昇するにつれてcollexonの安定度が高まると考えられる現象が観測された。Nenstielたちは、この点について、同じレベルの原子置換が実現されれば、全ての半導体の標準的特性と考えてよいとしている。
もし以上の知見が理論研究によって裏付けられれば、collexonが半導体材料の一般的な特徴として認識される可能性がある。半導体は現代技術に欠かせないため、半導体の電子構造の解明を進めれば、理論科学者と実験科学者の双方に役立つことが期待される。
doi:10.1038/s42005-018-0033-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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