【生態学】スルホキシイミン系殺虫剤がマルハナバチのコロニーの適応度に影響を及ぼす
Nature
2018年8月16日
ネオニコチノイド系殺虫剤の重要な代替品と期待される新しいクラスの殺虫剤が、マルハナバチのコロニーに対して亜致死的影響を及ぼす可能性があることを報告する論文が、今週掲載される。
スルホキシイミン系殺虫剤は、ネオニコチノイド系殺虫剤に耐性を有する昆虫種を標的とする有効な殺虫剤であることが明らかになり、中国、カナダ、オーストラリアで承認され、いくつかのEU加盟国で認可申請手続きが進められている。ところが、スルホキシイミン系殺虫剤とネオニコチノイド系殺虫剤は、生物学的作用機序が同じで、花粉媒介生物に対するスルホキシイミン類の亜致死的影響の調査は十分に行われていない。
今回、Harry Siviterたちの研究グループは、実験室環境でセイヨウオオマルハナバチ(Bombus terrestris)のコロニーをスルホキシイミン系殺虫剤の一種であるスルホキサフロルに曝露させた上で、野外環境中に放出すると、セイヨウオオマルハナバチの働きバチと繁殖能力のある雄の生産量が有意に減少することを明らかにした。この実験で、成長期の初期にあった25のコロニーを控えめな量のスルホキサフロルに2週間曝露させたところ、曝露後2~3週間でこれらのコロニーと26の対照コロニーとの間で個体数の差が生じ始め、この差は、コロニーの生活環が完了するまで持続した。スルホキサフロルに曝露されたコロニーでは、繁殖能力のある仔が54%減少した。この結果は、コロニーの生活史の初期段階においてセイヨウオオマルハナバチの小規模コホートがスルホキサフロルに曝露されると、コロニーの適応度に長期的な影響が及ぶ可能性のあることを示唆している。これに対して、採餌行動や花粉量に差はなかった。
Siviterたちは、科学的根拠に基づく法律がなければ、スルホキサフロルへの曝露によって、ネオニコチノイド系殺虫剤が花粉媒介生物に及ぼした環境影響と同じような結果が生じる可能性があると考えており、規制当局に対し、新規殺虫剤の使用認可を行う前に致死的影響と亜致死的影響の評価を行うことを求めている。
doi:10.1038/s41586-018-0430-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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