【感染症】ナチュラルキラー細胞が結核の潜伏感染に関係している
Nature
2018年8月23日
ナチュラルキラー(NK)細胞が高レベルであることと結核菌の潜伏感染が関連していることを報告する論文が、今週掲載される。この研究知見から、NK細胞が結核の感染防止に積極的な役割を果たしているかについて疑問が生じている。
結核は、細菌性疾患で、感染症関連死の主たる原因の1つとなっている。結核感染の大部分は潜伏感染で、表立った症状はなく、感染症は抑制状態にある。世界人口の4分の1にあたる人々が結核菌に潜伏感染していると推定されているが、活動性結核へ進行するのは潜伏感染例の10%未満だ。しかし、それぞれの感染者の転帰に影響を及ぼす免疫性因子についての解明は進んでいない。
今回、Yueh-hsiu Chien、Purvesh Khatriたちの研究グループは、潜伏感染に至る免疫状態と活動性結核への進行に伴う免疫状態の変化を調べるため、さまざまなヒトのコホートを対象として、マスサイトメトリー解析と遺伝子発現データセットの検討を組み合わせた研究を行い、結核の潜伏感染者、活動性結核患者、および非感染者の免疫細胞集団の差異の特定を試みた。
その結果、結核の潜伏感染はNK細胞数が多いことと関連しており、非感染者と比べて抗毒素応答が高いことが判明した。NK細胞は、白血球の一種で、特定の病原体を死滅させる作用がある。活動性結核の患者の場合には、NK細胞の値が低くなるが、結核感染が治癒すると正常値に戻った。ただし、今回の知見によって、NK細胞と結核の潜伏感染との因果関係を証明することはできない。
さらに、著者たちは、NK細胞の測定値を用いて、患者の肺における結核の活動性レベルと感染負荷を判定できることを明らかにした。この成果は、結核の進行の評価と治療法の最適化に役立つ可能性がある。
doi:10.1038/s41586-018-0439-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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