【進化】哺乳類の生殖形質の進化時期の特定に役立つ動物の家族の化石
Nature
2018年8月30日
哺乳類に似た動物の成体と仔が一緒に保存された化石について記述された論文が、今週掲載される。米国アリゾナ州で出土したこの新しい化石標本は、1億8400万年前のものとされ、現生哺乳類の生殖戦略と成長戦略が進化した道筋に光を当てる。
哺乳類を定義する特徴が生殖であることは、ほぼ間違いないだろう。つまり、ほとんど全ての哺乳類が卵生ではなく胎生であり、母乳で仔を育てる。哺乳類は進化するにつれて、産仔数が相対的に減少して個体当たりの母親の投資が大きくなるとともに、幼少期の頭蓋骨の発達に変化が生じて脳が大型化する傾向を示している。しかし、哺乳類やその祖先の仔が成体と一緒に化石に保存されることは珍しく(新生仔や胎仔はさらに稀少)、こうした進化のタイミングは正確に分かっていない。
今回、Eva HoffmanとTimothy Roweは、現在の米国アリゾナ州北東部で発掘されたジュラ紀初期のKayentatherium wellesiの、成体(母親と推定されている)と共に埋没した仔の一群の化石の発見を報告している。K. wellesiは、真正の哺乳類ではないが、哺乳類様動物の1種である哺乳綱トリティロドン科に属している。
この一群には38体の仔が含まれていたが、これは哺乳類で予想される産仔数の2倍で、爬虫類の場合に匹敵する。K. wellesiの仔の頭蓋骨は、成体とは大きさが異なるが、形状は似ている。このことは、K. wellesiが現生爬虫類と同じように成長し、現生哺乳類の成熟段階に見られる頭蓋骨の伸長は起こらなかったことを示唆している。このように産仔数の多さと頭蓋骨の均一な成長とが結び付いていることは、脳の大型化が哺乳類の生殖と発達に変化を生み出したとする学説を裏付けている。
doi:10.1038/s41586-018-0441-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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