落角期はシカにとって死活問題
Nature Ecology & Evolution
2018年9月4日
角のない雄ジカがオオカミに狙われやすいことを明らかにした論文が、今週掲載される。このことはシカにとって問題となる。早く角を落としたシカは、再び角が生えると次の交尾の可能性が高まる一方で、捕食者に対する防御力を失っているのである。
雄のアメリカアカシカ(北米のシカの1種)は、交尾期間が過ぎた後2~3カ月で角を落とす。新しい角はすぐに成長し始め、次の交尾期にライバルの雄に対する武器として使えるようになる。早く角を落とせば次の交尾期までにより大きな角を生やすことができるにもかかわらず、雄ジカが角を落とすタイミングはさまざまである。大きな角はライバルに対する優位性につながり、交尾の機会を増やせるのに、である。
Matthew Metzたちは、米国イエローストーン国立公園で雄のアカシカを13年にわたって観察し、角を早く落とすことに未知のコストがあるのかを調べた。その結果、雄ジカの群れは、角のない個体が1頭でもいるとオオカミの襲撃を10倍受けやすくなることが明らかになった。オオカミが狙うのは断然、角のない個体であるため、アカシカ個体群内の角のない個体は健康状態が良いにもかかわらず、落命するリスクが高くなっていた。
この知見から、角は、配偶者を巡る競争で武器として使われる他に、捕食者に対する抑止という第2の機能を果たしていることが示唆された。しかし、角を生え替わらせる必要性によってこの2つの機能の間にトレードオフが生じ、これがアカシカの進化に影響を与えたと考えられる。
doi:10.1038/s41559-018-0657-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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