培養ES細胞における遺伝的変化
Nature Biotechnology
2011年11月28日
培養したヒト胚性幹細胞(hESC)の遺伝的安定性に関するこれまでで最大規模の研究の報告が寄せられている。世界各国の38の研究機関に由来する人種的に多様なhESC株125種の分析によって、これらの細胞にみられる遺伝的変異が、その細胞本来の特性に関係するのか、それとも細胞培養に用いられた技術に関係するのかが明らかになった。 hESCは、原理的に体のどのような型の細胞にも変換が可能で、しかも実験室で無制限に成長、分裂できるため、細胞治療への利用が期待される。しかし長期間培養する間に細胞に遺伝的変異が起こる可能性があり、これらの変異が、再生医療への細胞の利用の差し障りになることもありうる。長期間の培養中に生じて持続する変異は、自己再生能を高めるなど、細胞に選択的優位性をもたらすと考えられてきた。 国際幹細胞イニシアチブのP W Andrewsたちは、幅広いhESCについて、培養初期と長期培養後に遺伝的解析を行った。同定された変異の大半はランダムに生じたように見えたが、細胞株の約20%で、20番染色体のある特定領域に増幅が起こっていた。この領域には3つの遺伝子があり、その1つBCL2L1が、hESCの培養適応を引き起こす遺伝子の有力候補であることが判明した。この研究で得られたデータは、培養hESCの治療への利用可能性を評価するうえで重要な問題となる、培養中に生じる遺伝的変異の頻度や種類の解明に役立つだろう。
doi:10.1038/nbt.2051
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