【天文物理学】中性子星の衝突による残光放射を説明する
Nature
2018年9月6日
2017年に2個の中性子星が合体して電波放射と重力波が観測されたが、この電波放射に関する新知見を報告する論文が、今週掲載される。
2個の中性子星の合体による重力波が初めて検出され(GW170817)、その際、同時に電磁スペクトル上の広い領域で放射も検出された。この放射の源は、地球から4000万パーセク(1億3000万光年)離れたNGC 4993銀河とされた。GW170817に関連した電波残光放射とX線残光放射は、放射の開始が遅れ、合体から約150日後にピークに達し、その後は比較的急速に減少した。これまでに残光放射を説明するさまざまなモデルが提案されており、例えば、「チョークドジェット」モデル(噴射されたアウトフローが、中性子星の合体の際に噴出した中性子過剰物質から完全に逃れられなかった状態)や、うまく逃れたジェットが広角アウトフローに取り囲まれるモデル(ジェットからのエネルギーが合体によって噴出した膨張性物質に蓄積されて、「繭」を形成している状態)がある。しかし、これまでに集められた観測データからは、どちらのモデルが正しいのかを判定することはできなかった。
今回、Kunal Mooley、Adam Deller、Ore Gottliebたちの研究グループは、角度分解能の高い電波観測法を用いて、GW170817に関連した電波放射源が、合体の75~230日後に見かけ上、超光速で運動しているように見える現象(実際の運動は光速に近いことを意味する)を示したことを明らかにした。著者たちは、初期の電波放射は広角アウトフロー(「繭」)によって駆動されたが、後期の電波放射は高エネルギーの狭いジェットに支配されていた可能性が非常に高い、という考えを示している。この観測結果は、連星系の中性子星の合体による残光放射が、上述のうまく逃れたジェットのモデルで説明できることを裏付けている。
doi:10.1038/s41586-018-0486-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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