【量子計算】モジュール型量子計算アーキテクチャーへの前進
Nature
2018年9月6日
実現可能な量子コンピューターに向けた重要な一歩となる、モジュール型量子計算アーキテクチャーの基本的構成要素の実証に成功したことを報告する論文が、今週掲載される。
量子コンピューターは、古典コンピューターにとってかなり重い負担となる問題を解決する能力を秘めている。しかし、現実に存在する量子系に内在するエラーとノイズのために、大規模な量子プロセッサーの構築は難しい。1つのネットワーク内に個別の量子系が接続されるモジュール型アーキテクチャーが、スケーラブルな量子計算を実現するためのカギである可能性がある。ところが、モジュール型アーキテクチャーの構築が難題であることが判明している。
今回、Kevin Chouたちの研究グループは、モジュール型アーキテクチャーに必須の構成要素の開発に成功し、2つのモジュールにわたる量子演算をオンデマンドで行えることを初めて実証した。Chouたちが提示したのは、いわゆるテレポートしたcontrolled-NOTゲートという論理ゲートで、論理的に符号化したデータ量子ビットに作用する。このコンセプトは、1999年に提唱されたが、これまでオンデマンドでの実行は実証されていなかった。このような量子ゲートのテレポーテーションは、データ量子ビット間の直接の相互作用に依存しない2つの未知の量子状態の間での演算によって構成される。
量子ゲートが実現されたかどうかは、演算がその理想的パフォーマンスにどれだけ近づいているのかを示す指標である忠実度(fidelity)によって判定できる。今回の研究で、テレポートしたゲートの忠実度は79%だった。今回の研究は、このようなモジュール的アプローチが実現可能なことを実証することで、将来的なフォールトトレラントな量子コンピューターの開発に向けた希望の持てる進展となった。
doi:10.1038/s41586-018-0470-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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