【生態学】田園地帯のハリネズミ集団のモニタリング
Scientific Reports
2018年9月7日
英国のイングランドとウェールズの田園地帯に生息するハリネズミ集団を脅かすと考えられる要因についての評価が行われた。今週掲載されるこの論文では、田園地帯のハリネズミ集団に関する全国調査の結果が報告されており、著者は、この調査結果を今後のハリネズミの個体数モニタリングで基準値として用いることができるという考えを示している。
ハリネズミ集団に関する研究は都市部では盛んに行われているが、田園地帯のハリネズミについてはほとんど解明されていない。これまでの研究は、規模が小さ過ぎてより広い地域に関する知見が得られないか、対象範囲が広過ぎて根本的な生物学的影響や人為的影響が明確にならないかのどちらかだった。
Ben Williamsたちの研究グループは、ハリネズミの存否を調べるための足跡追跡用トンネルを使って、2014~2015年にイングランドとウェールズのさまざまな生息地の261地点で調査を行った。その結果、ハリネズミの存在が検出されたのは、わずか55カ所だった。これは、田園地帯のかなりの部分にハリネズミが生息していないことを示している。
ハリネズミの個体数減少に関する過去の研究は、ハリネズミとアナグマの相互作用がもたらす悪影響に重点が置かれていた。今回の調査から、アナグマの巣穴が多く分布する地域ではハリネズミの個体数が少ない場合が多いことが明確になった。Williamsたちは、アナグマが、捕食と食料資源の奪い合いによって悪影響を及ぼすことを認めているが、今回の研究で、ハリネズミとアナグマが共存している地域も明らかになった。ハリネズミとアナグマの関係を解明するには、さらなる研究が必要となる。今回の研究で、調査地点のうちの70カ所はハリネズミとアナグマのいずれも生息していないことが明らかになっており、ハリネズミとアナグマの生活を維持できない田園地帯が一部存在することが示された。Williamsたちは、その理由として土地管理が強力に行われたことを挙げ、それによって餌となる生物と適切な生息地が減ったことを指摘している。
doi:10.1038/s41598-018-30130-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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