【環境】プラスチック汚染がウミガメにもたらすリスクは若齢の個体ほど大きい
Scientific Reports
2018年9月14日
ウミガメがプラスチックの摂取によって死亡するリスクは、成体より若齢個体(幼若個体と孵化個体)の方が大きいことを報告する論文が、今週掲載される。
今回、Britta Denise Hardestyたちの研究グループは、ウミガメの剖検246例と座礁データベースに登録された剖検記録706件のデータを調べた。その結果、幼若個体は成体よりもプラスチック摂取量が多いこと、そして消化管に残存するプラスチックの量は死因によって異なることが明らかになった。プラスチック摂取量は、死因不明の場合が最も少なく、死因がプラスチック関連でなかった場合(船との衝突、溺死など)がそれに次いで少なかった。一方、プラスチック摂取量が最多だったのは、プラスチック摂取が死因の場合だった。246の剖検例のうち、体内にプラスチックが見つかったのは幼若個体で23%、孵化個体で54%であるのに対し、亜成体では15%、成体では16%だった。また、体内に見つかったプラスチックの数量は1~329個と幅があり、重量は最大10.41グラムだった。以上の知見から、採餌場所と生活史の段階がウミガメの死亡リスクに影響を及ぼす可能性が示唆される。若齢個体は海流に乗って海を漂い、沿岸海域の海面に近い所で餌を得る傾向があり、そうした場所の方が、ウミガメの消化管に蓄積したり消化管穿孔を引き起こしたりする恐れのあるプラスチック製品で汚染されている可能性が高いのだ。
Hardestyたちは、ウミガメのプラスチック摂取量と死亡リスクの関係のモデルとして、ウミガメの甲羅の長さと年齢に関してプラスチックの摂取数量を考慮に入れたモデルが最良であることを見いだした。Hardestyたちが作成したモデルは、世界的に特に沿岸海域で減少しつつあるウミガメの個体数に対してプラスチック汚染がもたらすリスクの定量化に向けた第一歩と言える。
doi:10.1038/s41598-018-30038-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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