CAR T細胞療法に対する抵抗性が生じる珍しい機構
Nature Medicine
2018年10月2日
患者の白血病が、珍しい機構によってCAR T細胞療法に対する抵抗性を獲得した症例が報告された。この現象はCAR T細胞の作製過程に関係があり、このような形での治療抵抗性の発生を防ぐ改良型プロトコルの必要性が明らかになった。
CAR T細胞療法は個別化医療の1例である。まず、患者の血液から免疫系のT細胞を単離し、がん細胞の表面に見られるタンパク質を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子操作を加えてから、このような改変T細胞を患者の血中に戻してやる。これにより悪性細胞の根絶が期待できると考えられている。治療非応答性のB細胞白血病や再発型B細胞白血病を発症した小児患者や若年患者に対するCAR T細胞療法は昨年、遺伝子治療として初めて米国食品医薬品局(FDA)により承認された。臨床でこの治療を受けた患者ではこれまでにない高い寛解率が見られているが、がん細胞が標的となるタンパク質の発現を抑制して、CAR T細胞の細胞殺傷作用を回避することがある。
今回C Juneたちは、CAR T細胞に対する抵抗性が生じる非常に珍しい機構について報告している。これは白血病の治療中の患者で見られたもので、T細胞の改変過程で混入した1個の白血病細胞が見逃され、CARが発現されるような遺伝子操作を受けて患者の血中に戻された。この操作によって、白血病細胞はCAR T細胞から効果的に身を隠してしまい、抑制されずに増殖できるようになって、これが再発につながった。
同じ機構による再発例は、世界各地でこの治療を受けた369人の患者中では見つかっておらず、特殊なケースと見なすべきだと著者たちは述べている。しかしこの知見は、混入した腫瘍細胞を残らず取り除き、有害な影響を防止できる改良型プロトコルの必要性をはっきり示している。
doi:10.1038/s41591-018-0201-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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