【気候変動】森林管理は単純明快な気候変動緩和策ではない
Nature
2018年10月11日
気候変動の緩和に役立てることを目的としたヨーロッパの森林管理方法はいずれも、気候に関するパリ協定の目標を完全に達成できるものになっていないという研究結果を報告する論文が、今週掲載される。著者たちは、今後の取り組みでは、気候変動の影響を軽減しようとするのではなく、気候変動から森林を守ることに注力するのが望ましいと主張している。
パリ協定では、産業革命前から21世紀末までの全球気温の上昇を摂氏2度未満に抑える上で、森林管理が役立つことが前提になっている。しかし、大気中の二酸化酸素を森林に隔離する方法には、想定外の副作用が生じる可能性がある。森林管理が変更されると、例えば、地表面の反射能が低下して、太陽放射の吸収量が増加し、地表温度が上昇する可能性がある。そうした影響によって炭素吸収量の増加による恩恵がどの程度相殺されてしまうのかを調べるための研究が必要となっている。
今回、Sebastiaan Luyssaertたちの研究グループが、ヨーロッパでの実施を念頭においた気候変動緩和のためのさまざまな森林管理方法(最大規模の炭素隔離、森林の太陽光反射率の上昇、地表付近の気温低下など)の結果をモデル化したところ、気温の上昇や降水量の減少を伴わずに炭素吸収量を最大化できる単一の森林管理方法は存在しないことが判明した。
Luyssaertたちは、最有望視されている地表付近の気温低下を目指す森林管理方法によっても、局所規模でわずかな気候変動緩和の恩恵しか得られないことを明らかにしている。これらの結果に基づいて、著者たちは、今後のヨーロッパでの森林管理の取り組みでは、気候変動の緩和を試みるのではなく、気候変動の影響から森林を守ることに主眼を置くべきだとの考えを示している。
doi:10.1038/s41586-018-0577-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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