Research Press Release
クロマチン制御因子を活用
Nature Immunology
2011年11月14日
ある種のT細胞白血病が発生する仕組みの手がかりがつかめたとの報告が寄せられている。2種類のクロマチン結合タンパク質の相互作用を介して、一群の遺伝子が揃ってオンやオフになる仕組みが明らかになった。
K Georgopoulosたちは以前に、転写因子Ikarosをもたないマウスに白血病が高い頻度で発生することを明らかにしているが、Ikarosが白血病への形質転換をどのような仕組みで抑制しているのかは不明だった。今回、クロマチンリモデリングタンパク質Mi-2βのゲノム全域にわたる結合パターンを野生型T細胞と変異T細胞で比較することにより、IkarosがMi-2βの働きを制限していることが明らかになった。
正常なT細胞が胸腺で発生する際に、Tリンパ球の分化を誘導する遺伝子のところへIkarosがMi-2βを引き寄せる。また同時に、Ikarosとの結合によってMi-2βが細胞の成長と分裂を促進する遺伝子のところに運ばれなくなり、これらの遺伝子の発現レベルは低いままに抑えられる。Ikaros欠失細胞では増殖促進遺伝子にもMi-2βが結合するようになり、その発現レベルが上昇し、T細胞の分化成熟の停止につながることがわかった。Ikarosは、Mi-2βを発生プログラムに利用して、T細胞を分化成熟させるとともに急激な増殖と白血病への形質転換を防いでいると考えられる。
doi:10.1038/ni.2150
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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