【神経科学】嗅覚と空間記憶が関連している可能性
Nature Communications
2018年10月17日
ヒトの嗅覚と空間記憶は関連しており、両者が同じ脳領域に依存している可能性があることを明らかにした論文が、今週掲載される。
動物が嗅覚を持つようになったのは、環境におけるナビゲーションに役立てるためだったと考えられている。現在までに、嗅覚同定(何のにおいかを特定すること)と空間記憶(環境中のさまざまな目標物同士の関係を学習し、認知地図を構築することに関与する)が関連している可能性を示すいくつかの証拠が集まっているが、それらが直接検討されたことはない。
今回、Veronique Bohbotたちの研究グループは、嗅覚同定と空間記憶が相互に関係しており、もしそうなら、両者が同じ脳領域に依存しているのではないかと考え、これらを示す直接的な証拠を探した。Bohbotたちは、ボランティア57人が参加した実験で、さまざまなにおいをかぎ分ける試験の成績が優秀だった被験者は経路探索課題(仮想市街においてさまざまな目標物を手掛かりに進路を決定する課題)の成績も優秀だったことを明らかにした。
Bohbotたちはまた、磁気共鳴画像法を用いて、脳の左内側眼窩前頭皮質(mOFC)の厚みがあることと右海馬の容量が大きいことから、2つの課題における成績優秀者を予測できることを見いだした。このことは、嗅覚同定能力と空間ナビゲーション能力が同じ脳領域に基づいている可能性を示唆している。さらに実施された試験では、mOFCに影響する脳病変を持つ9人の患者集団は、嗅覚同定課題と空間記憶課題の成績がいずれも低いことが判明した。一方、mOFCに影響しない類似の脳病変を持つ9人の患者集団では、このような成績の低下は見られなかった。
Bohbotたちは、今後研究を深めていく必要があるものの、今回得られた知見によって、嗅覚の機能は元来、認知地図の構築と空間記憶を支えるものであったとする説が裏付けられたと主張している。
doi:10.1038/s41467-018-06569-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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