Research Press Release

【物理学】宇宙空間でのボース・アインシュタイン凝縮体の生成

Nature

2018年10月18日

宇宙空間で初めて生成されたボース・アインシュタイン凝縮体について報告する論文が、今週掲載される。この凝縮体を用いた実験によって得られた知見は、宇宙空間に配置される重力波検出器の開発を下支えできるかもしれない。

ボース・アインシュタイン凝縮体は、希薄な原子気体が絶対零度に近い温度まで冷却されて、全ての原子が高密度の量子状態に凝縮することによって生じる物質状態である。その特性ゆえに、非常に小さな慣性力の検出に適しており、重力からの加速を測定するために利用できる。原子の自由落下時間が長くなると、こうした測定の感度は上昇する。ボース・アインシュタイン凝縮体のような量子系の研究は、重力波、一般相対性理論、量子力学の理解を深める上で役に立つ。

今回、Maike Lachmann、Ernst Raselたちの研究グループは、観測ロケットミッションMAIUS-1(微小重力状態での物質波干渉測定)のロケット飛行中に、自由落下状態のボース・アインシュタイン凝縮体を宇宙空間で初めて生成した。この凝縮体の能力は、地上で生成されたものに十分匹敵し、1.6秒で約10万個の原子を生成できる。著者たちは、6分間の宇宙飛行の間に100以上の実験を実施した。これらの実験によって得られた知見は、宇宙空間での冷却原子実験に関する理解を深める上で役立ち、量子気体実験にとって新時代の幕開けとなる可能性もある。

doi:10.1038/s41586-018-0605-1

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

「注目のハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度