AIドクターが選ぶより良い敗血症治療法
Nature Medicine
2018年10月23日
AIドクターと呼ばれる学習エージェント(人工知能)は、医師がリアルタイムでより良い決定をするのを助け、敗血症患者の転帰改善に役立つ可能性があることが、今回明らかになった。
敗血症は、深刻な感染に対して身体が極端な反応を示すことにより組織や臓器が損傷されるという致命的な状態で、世界の死因の第3位を占め、病院における死亡の主原因となっている。敗血症の治療で重要なのは、適切な輸液と投薬によって患者の血圧を安定に維持することだが、臨床で現在行われている治療は最適なものとは言えない。
A Faisal、A Gordon、M Komorowskiたちは今回、臨床で医師が下す決定をより良いものにするためにAIドクターを開発した。この人工知能は、実際に医師たちが下した数万の治療方針決定例を分析することで、敗血症に対する最適な治療法を学習する。AIドクターでは、経済学やゲーム理論の分野でよく使われる強化学習というタイプの機械学習が使われていて、人間の医師が一生の間に経験する症例の何倍にも上る患者データから、有益な情報を抽出できる。
著者たちは、AIドクターは人間の医師に比べ、敗血症患者に対して最適な治療法を選ぶ確実性が平均的に高いことを見いだした。さらに、この訓練データとは別の大規模な検証コホートでも、実際に臨床医が処方した薬の服用量がAIドクターの推奨したものと一致する患者の死亡率が最も低かった。
今回の研究については、臨床試験でのリアルタイムのデータと意思決定を使用しての評価と並行して、さまざまな医療現場で検証を行うことが必要だろう。だが、著者たちは、敗血症の死亡率をほんの少しであっても低下させることができれば、世界で毎年数万人の命が救われることになると述べている。
doi:10.1038/s41591-018-0213-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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