【医学研究】ニコチン受容体と低温受容体を同時に標的とする方法でマウスの肥満を緩和する
Nature Communications
2018年10月24日
マウスにおいて、ニコチンに関わるシグナル伝達経路と寒冷曝露に関わるシグナル伝達経路を同時に薬剤の標的とすることで、体重が減り、代謝的健康状態が改善されることを示した論文が、今週掲載される。今回用いたイシリンとジメチルフェニルピペラジニウムは、それぞれ熱産生促進経路と食欲抑制経路を刺激するもので、こうした経路によって全身のエネルギー収支が調節されている。今回、この2種の化合物を組み合わせて用いることで、肥満マウスの減量が促進された。
肥満は、糖尿病などの代謝疾患のリスク因子であり、主要な健康課題の1つとなっている。喫煙と寒冷曝露は、ヒトのエネルギー代謝の環境調節因子であり、前者は食欲を抑制し、後者はエネルギー消費を増加させる。現在、寒冷曝露を模倣してエネルギー消費を増加させ、減量を促進する方法として、薬剤を用いて熱産生を増強する方法の研究が行われている。ところが、この方法は食物摂取量の増加を伴うので、目的とする効果が相殺される恐れがある。
今回、Matthias Tschopたちの研究グループは、ニコチン性アセチルコリン受容体の一種であるα3β4と、低温で活性化する受容体TRPM8(transient receptor potential cation channel subfamily M member 8)とを組み合わせて使用する低分子治療法を用いた。この治療法は、肥満マウスの体重を減らし、耐糖能を改善させた。
Tschopたちは、今回の知見は肥満の新しい治療薬に道を開くものであり、その治療薬はタバコの煙のように健康に対して悪影響を及ぼさないと指摘している。ただし、この知見をヒトに応用できるかを見極めるには、さらなる研究が必要となる。
doi:10.1038/s41467-018-06769-y
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