【微生物学】乳幼児の腸内マイクロバイオームの縦断的解析による新知見
Nature
2018年10月25日
乳幼児期の腸内マイクロバイオームの発達について報告する2編の論文が、今週掲載される。これらの論文で報告される新知見によって、マイクロバイオームと乳幼児の成長と1型糖尿病への影響の間の関連についての手掛かりが得られた。
腸内マイクロバイオームは時間とともに変化するが、乳児から小児への移行期に関する理解は十分でない。これまでの研究から、腸内マイクロバイオームは1型糖尿病などさまざまな疾患の原因や経過と関連している可能性のあることが示唆されている。TEDDY(The Environmental Determinants of Diabetes in the Young)研究は、この関連を調べており、米国、スウェーデン、ドイツ、フィンランドの6か所の臨床施設で採集された検体から乳幼児のマイクロバイオームに関するこれまでで最大級のデータセットを作成している。
今回、Joseph Petrosinoたちの研究グループは、TEDDY研究の被験者である生後3~46か月の乳幼児903人から月1回採集された合計1万2500点の糞便検体について、塩基配列解読による遺伝子解析を行った。腸マイクロバイオームの組成と多様性は、時間の経過とともに(1)発達期(生後3~14か月)、(2)移行期(生後15~30か月)、(3)安定期(生後31か月以降)の3段階で変化した。発達期には、母乳哺育とビフィズス菌(Bifidobacterium)属の豊富さとの関連が認められた一方、離乳後の乳幼児は、より多くの種類の食物を摂取するようになり、腸内マイクロバイオームの多様性が増加した。経膣分娩による出生はバクテロイデス(Bacteroides)属細菌の一時的増加と関連しており、この細菌の一時的増加は、分娩様式にかかわらず、腸マイクロバイオームの多様性増加や成熟と関連していた。また、きょうだいの有無、ペットへの曝露、および地理的な場所が腸マイクロバイオームのプロファイルの個人差を生み出す要因であることも分かった。
一方、Curtis Huttenhowerたちの論文には、TEDDY研究の被験者である783人の乳幼児から採集した約1万1000点の糞便検体の解析を行い、1型糖尿病を発症する小児の初期のマイクロバイオームの特徴を明らかにしたことが記されている。Huttenhowerたちは、1型糖尿病を発症していない乳幼児の腸マイクロバイオームには、発酵と短鎖脂肪酸合成に関与する遺伝子が数多く存在していることから、これまでに発表された証拠と考え合わせると、これらの遺伝子は1型糖尿病の保護作用に関連していると考えられると報告している。
なお、Huttenhowerたちは、サンプリングされた乳幼児(大部分が非ヒスパニック系白人で1型糖尿病のリスクが高い)が他の集団を代表していない可能性のあることを明示している。以上の2つの研究は、共に乳幼児の腸マイクロバイオームの特徴を解明しており、研究者にとって貴重な情報資源となるだろう。
doi:10.1038/s41586-018-0617-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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