【老化】線虫とマウスでミトコンドリアの機能を高める方法
Nature
2018年10月25日
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の濃度を高める新しい方法を用いると、ミトコンドリアの機能が増進し、線虫の寿命が延び、マウスに健康保護効果がもたらされることを報告する論文が、今週掲載される。
NAD+は、ミトコンドリアのエネルギー産生においてカギとなる分子だが、その濃度は、年齢を重ねるに従って低下する。NAD+の濃度を高めれば、代謝と寿命に数々の有益な影響が及ぶ可能性のあることが、過去の研究で示唆されている。
今回、Johan Auwerxたちの研究グループは、NAD+を生成する分子の利用可能性を低減させる酵素ACMSDを遮断してNAD+の合成を増加させる新しい方法について報告している。NAD+濃度が上昇すると、線虫の一種Caenorhabditis elegansとマウスのミトコンドリアの機能が増進した。また、線虫においてACMSD産生を遺伝学的に遮断すると、線虫の活動レベルが上昇し、寿命が延びた。一方、マウスにおいてACMSD産生を遺伝学的に遮断すると、肝細胞における脂肪酸関連の細胞死が予防された。ACMSDを阻害剤(TES-991とTES-1025)を用いて薬理学的に遮断すると、マウスの肝臓、腎臓、および脳におけるNAD+合成が増加した。TES-991は、非アルコール性脂肪性肝疾患のマウスモデルの肝細胞を保護し、TES-1025は、急性腎障害のマウスモデルの腎細胞を保護した。
Auwerxたちは、こうした効果はヒトでは検証されていないが、今回の結果から、こうした知見が臨床応用につながるかを調べるための新たな研究を行う必要性が示された、と結論付けている。
doi:10.1038/s41586-018-0645-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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