熱波研究のためのデータのツールボックス
Scientific Data
2018年10月31日
現在と過去の熱波に関する知見が得られるデータベースGlobal Heatwave and Warm-spell Record(GHWR)についてのデータ論文が、今週、Scientific Dataに掲載される。GHWRは、研究者に公開されており、熱波が人間や環境に与える影響に関する研究を促進するだろう。
熱波は一般的に、平年を大きく上回る高い気温が長期間継続することと定義されている。地球温暖化によって熱波の頻度と厳しさが増す可能性が高いが、「熱波とは何か」という定義が絞り込まれていないため、研究がうまく進まず、現在と過去の熱波を比較することが難しい場合もある。熱波は、自然に潜むサイレントキラーと言われ、一部の地域では最も死者数の多い自然災害の1つとなっており、インフラに損害を与え、作物の収量を減らし、医療制度に負担をかけることがある。
今回Mojtaba Sadeghたちの研究グループは、1979~2017年に発生した熱波と温暖期間(warm spell)に関する大規模なデータ記録を紹介しており、ここには、強度、継続期間、頻度などに関する情報が含まれている。Sadeghたちは、米国大気海洋庁(NOAA)の地球システム研究所(Earth System Research Laboratory)からデータを集め、熱波と温暖期間に該当するかを判定するための標準化測定基準を開発した。温暖期間は、重大な影響が生じる恐れがあるにもかかわらず熱波ほど詳しく研究されていなかったため、今回Sadeghたちのデータ記録に温暖期間に関するデータが含まれたことは重要である。研究者たちは、GHWRにアクセスすれば、数々の熱波の定義に即して、地域や時期の異なる熱波や温暖期間を比較できる。
GHWRは、有益な基礎情報資源として将来の熱波の理解を進め、その予測を改善できると考えられ、このため熱波の影響を受ける人々に対する早期警報を改善し、介入の効果を高められる可能性を秘めていると、Sadeghたちは結論付けている。
doi:10.1038/sdata.2018.206
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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