【医科学】正常な筋再生においてアミロイド様集合体の形成が果たす機能
Nature
2018年11月1日
TDP-43タンパク質は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経筋疾患に関係すると一般に考えられ、病原性を持つとされる。このタンパク質が、筋肉の正常な成長と再生の過程において筋肉に蓄積し、機能的な役割を担っていることを報告する論文が、今週掲載される。著者たちは、疾病状態において筋再生が活発になることで、TDP-43の有害な蓄積が引き起こされる可能性があると考えている。
TDP-43の凝集体は、神経筋疾患(封入体ミオパチーなど)の患者の骨格筋に蓄積する。マウスとショウジョウバエでは、TDP-43の量を減らすと加齢性筋力低下が起こるため、TDP-43は筋形成において機能的な役割を担っている可能性があることが示唆されている。
今回、Roy Parker、Brad Olwinたちの研究グループは、哺乳類の正常な骨格筋形成におけるTDP-43の機能を調べた。その結果、TDP-43がマウスの筋細胞中に大量に存在し、骨格筋細胞の形成過程でTDP-43の量が増加することが判明した。遺伝的にTDP-43を枯渇させると、細胞の増殖が阻害され、細胞死につながった。これは、TDP-43が筋再生において重要な機能的役割を担っていることを示唆している。また、著者たちは、TDP-43がマウス筋細胞の増殖過程で集合してより複雑な構造(myo-granule)をとり、このmyo-granuleが時間の経過とともにアミロイド様構造に移行することがあるが、正常な機能を担う成熟細胞では通常除去されると報告している。筋力が低下した患者の生検では、再生中の筋肉にmyo-granuleが持続的に存在することが確認された。
著者たちは、神経筋疾患において筋再生が持続することでTDP-43の量が増え、これによって生じるmyo-granuleが除去されないと、筋病変で見られる病原性のアミロイド様集合体が生じる可能性があると考えている。この移行の発生リスクは、加齢関連因子によって大きくなる可能性がある。
doi:10.1038/s41586-018-0665-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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