風力発電所は食物連鎖の頂点に君臨する
Nature Ecology & Evolution
2018年11月6日
風力発電所による地域生態系への影響は食物連鎖の中を伝わり、あたかもタービンが新たな頂点捕食者であるかのように、下位の動物にまで間接的な影響を及ぼしていることを明らかにした論文が、今週掲載される。
これまでの研究から、風力発電所が地域の鳥類や翼手類(コウモリ類)の生息数を減少させ、鳥類の渡りの経路の妨げとなり、陸上哺乳類の密度や活動性を低下させていることを示す証拠が得られている。しかし、風力発電所による最大の影響は、空を飛ぶ生物種にしか及ばないと考えられることが多い。
Maria Thakerたちは、インドの西ガーツ地方の高原に生息する野生動物を調べ、風力発電所による生態学的な影響が、従来の想定を超えて群集の深くまで及んでいることを明らかにした。風力発電所がない地域では、風力発電所周辺の地域と比べてほぼ4倍の数の捕食性鳥類が観察された。また、Thakerたちは風力発電所周辺で多くのトカゲ類が生息していることを見いだし、これは、こうした地域では捕食性鳥類からの攻撃が少ないためだと考えている。これらのトカゲ類は、ストレスホルモンであるコルチコステロンのレベルが低く、人間が近づいてもなかなか逃げなかった。これは、これらのトカゲ類が、捕食に遭った経験が少ないことを表している可能性がある。
Thakerたちは、風力発電所が食物連鎖の頂点での付加的段階のように作用して、その結果、周辺の動物に波及効果を及ぼしていると考えている。そして、風力発電所は極めて重要な再生可能エネルギー源であるが、建設場所の選定にあたっては、地域生態系に与える影響に配慮する必要があることを示唆している。
doi:10.1038/s41559-018-0707-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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