【考古学】世界最古の形象壁画とされるボルネオ島の洞窟美術
Nature
2018年11月8日
世界最古の形象壁画が同定されたことを報告する論文が、今週掲載される。ボルネオ島(インドネシア)で発見されたその洞窟壁画には正体不明の動物が描かれており、この壁画は少なくとも4万年前のものとされる。
ボルネオ島の東カリマンタン州にある鍾乳洞には、数千点の岩壁画があり、(1)赤燈色の動物(主に野生のウシ)の壁画と手形ステンシル、(2)それよりも後の時代の、暗赤紫色の手形ステンシルと複雑なモチーフとヒトを描いた壁画、(3)最終段階の、黒色顔料で描かれた人物、船、幾何学模様という3つの時期に分類されている。しかし、これらの作品の正確な制作時期は明らかになっていない。
今回Maxime Aubertたちの研究グループは、Lubang Jeriji Saleh洞窟で見つかった、正体不明の動物が描かれた赤燈色の大型壁画を調べた。Aubertたちは、ウラン系列分析を行って、この壁画の上に成長した石灰岩の塊の年代を測定した。その結果、この壁画が少なくとも4万年前のものであり、最古の形象壁画になることを明らかにした。
また、同じ洞窟で見つかった第2、第3の赤燈色の手形ステンシルは最小年代が3万7200年前で、とりわけ第3の手形ステンシルの最大年代は、5万1800年前であることが判明した。Aubertたちは、これらの年代決定に基づいて、ボルネオ島のこの場所で岩壁画が描かれるようになったのは5万2000~4万年前で、ヨーロッパの現生人類によるとされる最古の壁画が描かれた時期とほぼ同じだと結論付けている。Aubertたちはさらに、暗赤紫色の壁画の年代を2万1000~2万年前と決定した。この時期は、大型動物の描写することから一貫してヒトの世界を表現するようになったという文化的変化を示す証拠となっている。
doi:10.1038/s41586-018-0679-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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