【微生物学】低グルテン食が腸内微生物相に与える影響はそれほど大きくない
Nature Communications
2018年11月14日
60人の健常者を対象とした研究から、低グルテン食が腸内微生物相と腸の生理に与える影響がそれほど大きくないことを明らかにした論文が、今週掲載される。この論文の著者は、そうした影響の大半について、グルテンを豊富に含む食品の摂取量が減り、食物繊維が質的に変化したことが原因である可能性を示唆している。
グルテンは、コムギ、ライムギ、オオムギの主成分であり、体内で消化されにくい部分のあるタンパク質によって構成されている。グルテンは、セリアック病などの特定の疾患の患者に害を及ぼすことがある。しかし、健常者がグルテンの摂取量を減らすことでどのような影響を受けるのかについては、解明が進んでいない。
今回、Oluf Pedersenたちの研究グループは、既知の疾患にかかっていない中年のデンマーク人60人を対象として、無作為化クロスオーバー比較試験を実施した。この試験は、低グルテン食(グルテン含有量が1日当たり2グラム)と高グルテン食(グルテン含有量が1日当たり18グラム)を比較する8週間(2ターム;2つに分けたグループが低グルテン食と高グルテン食をそれぞれ1タームずつ経験する)と、その間の6週間以上の中断期間からなる。こうして低グルテン食と高グルテン食の影響を比較したところ、低グルテン食は高グルテン食と比べて、腸内マイクロバイオームに生じる変化[ビフィズス菌(Bifidobacterium)種の数が減ったことなど]と特定の尿中代謝物に生じる変化がそれほど大きくなく、腹部膨満感(自己申告による)が改善した。
低グルテン食と高グルテン食は、グルテン含有量だけでなく、食物繊維の組成も異なっている。そのため、今回の研究で観察された影響は、グルテンの摂取量自体の減少によるものではなく、グルテンを豊富に含む食品の摂取量の減少に起因する食物繊維の質的な変化が原因である可能性がある。Pedersenたちはまた、今回の結果が別の年齢、民族的背景、または生活様式の集団にどのように一般化され得るかは、今後の研究課題だと結論付けている。
doi:10.1038/s41467-018-07019-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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