【社会科学】乳幼児期の教育的介入と成人になってからの社会的意思決定の関係
Nature Communications
2018年11月21日
乳幼児期(生後数か月から小学校入学まで)に教育的介入を受けると、成人後に社会規範を遵守する確率が高く、将来的な利益を得るために前もって計画を立てるのが上手になるという研究結果を報告する論文が、今週掲載される。今回の研究から、乳幼児期に受けた質の高い投資が、成人してからの社会的意思決定に影響を与える可能性のあることが示唆されている。
アベセダリアン・プロジェクト(ABC)は、米国ノースカロライナ州で実施された介入研究で、同州内の複数のリスクを抱える低所得家庭で1972~1977年に誕生した新生児に対して、生後5年間にわたって教育支援が行われた。先行研究から、この介入研究の参加者は成人になってからの認知能力、教育、経済、および身体的健康の点で良好な結果が得られたことが明らかになっているが、社会的意思決定戦略に対する影響を調べる研究は行われていない。
今回、Read Montagueたちの研究グループは、ABC参加者78人(39~45歳)を再び招集し、社会規範の遵守の要求と計画性を調べるための金融ゲームに参加させた。その結果、教育的介入を受けた被験者は将来の計画を立てるのが上手だった。また、ゲームにおいては、ABC参加者の方が、プレーヤー間で不平等な金銭の分配があった場合に(自分にとっての有利不利と関係なく)拒絶する確率が高かった。Montagueたちは、恵まれない生い立ちの子どもたちに教育資源を提供すると、社会的意思決定に対するプラスの効果が長期間持続し、社会規範の遵守を促して将来的な利益を得られるようにしている可能性がある、と主張している。
またMontagueたちは、こうした変化について、教育的介入の結果として生じる別の要因も関連している可能性があり、さらなる研究が必要なことを指摘している。
doi:10.1038/s41467-018-07138-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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