【医科学】正常に機能する胎盤オルガノイドが開発された
Nature
2018年11月29日
安定したヒト胎盤オルガノイドの長期培養について説明する論文が、今週掲載される。このオルガノイドモデルは、ヒト胎盤の発生の研究にとって重要な技術革新と言える。
多くの妊娠時の異常[妊娠高血圧腎症(子癇前症)、胎児成長制限、死産など]は、妊娠初期の胎盤の発育異常を原因としている。ところが、ヒト胎盤に関しては、実験に使用できる機能的なモデルがないため、十分な知識が得られていない。この問題を解決する1つの方法は、オルガノイド、つまり、小型化・単純化された器官モデルを研究室内での培養によって開発することだ。
Ashley Moffettたちは今回の論文で、ヒトの妊娠第1三半期(妊娠6~9週)の胎盤に由来する特化した栄養芽細胞のオルガノイドの長期培養について説明している。この遺伝的に安定した培養オルガノイドは、急速に増殖し、10~14日後に三次元構造を形成した。無作為に選ばれた3つの培養オルガノイドは、1年後も健全な増殖を続けた。
このオルガノイドは、生理的に正常な妊娠第1三半期の胎盤によく似ており、特定のタイプの栄養芽細胞への分化、絨毛様(指状)構造の形成、胎盤特異性ホルモンの分泌といった胎盤の典型的な特徴を示している。胎盤特異性ホルモンには、ヒト血清絨毛性(hCG)ホルモンが含まれており、胚の子宮壁への着床後に胎盤によって産生されるこの「妊娠」ホルモンの分泌は、市販の妊娠検査薬によって検出できる。今回の胎盤オルガノイドは、妊娠中に発生する生理的変化、代謝的変化、およびホルモンの変化の研究に用いることができる。
doi:10.1038/s41586-018-0753-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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