【考古学】石器の年代決定によってアラビア半島における初期ヒト族の存在を示す手掛かりが得られた
Scientific Reports
2018年11月30日
現在のサウジアラビアにあるSaffaqah遺跡から出土した数千点の石器(大型の剥片石器、手斧、大包丁を含む)の解析が行われ、アラビア半島における「アシュール」技術の確実な年代決定が初めて実現したことを報告する論文が、今週掲載される。この成果から、アシュール人の居住地は約24万~19万年前あるいはその後まで、河川や湖沼などの水ネットワークに沿ってアラビア半島の中心部に広がったことが示唆されている。そのため、Saffaqah遺跡は、アジア南西部においてアシュール人の遺跡と実証された中で最も新しいものということになる。
アシュール文化は、ヒト族の進化における重要な段階の1つで、手斧のような大型の切削工具が製作されていたことを特徴とする。今回Eleanor Scerri、Michael Petragliaたちの研究グループは、Saffaqah遺跡がこれまでに実証されたアラビアの遺跡の中で最も大規模な遺跡であることを報告している。研究グループは、この遺跡での新たな発掘作業で、500点を超える石器を発見した。1980年代に行われた発掘作業では8395点の石器が回収されたが、それらは年代決定されておらず、堆積層内の分布状況も詳しく論じられていなかった。研究グループは、これらの石器が含まれている堆積層とその下層の年代測定を行って、石器が堆積した時期を決定し、それに基づいて、これらの石器を製作・利用していたヒト族が存在していた時期を特定した。この知見に基づいて、上層の堆積層に含まれていた石器が堆積したのは約18万8000年前より以降だったとする見解が示されている。また研究グループは、アシュール文化は、アジア南西部においてその後の中期旧石器時代の典型的な技術と共存しており、この地域でヒト(Homo sapiens)が存在した時期と重複していた可能性があると主張している。
加えて、研究グループは、Saffaqah遺跡で見つかったアシュールの技術が他の発掘現場で発見されたアシュールの石器と異なっており、アシュールの伝統において大きく異なる技術的特徴が存在していたことが実証された点を指摘し、アシュール人の分散が数回にわたって起こったことがそれぞれの遺跡に反映されている可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41598-018-35242-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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