【幹細胞】ローヤルゼリーの成分に哺乳類幹細胞の多能性を維持する作用
Nature Communications
2018年12月5日
ローヤルゼリーのタンパク質成分であるロイヤラクチンが、マウスの胚性幹細胞(ES細胞)の多能性を維持することを報告する論文が、今週掲載される。また、今回の研究では、ロイヤラクチンの哺乳類における構造類似体Reginaが同定され、ReginaがES細胞の多能性に対する類似の作用を促進することが明らかになった。これらの知見は、幹細胞に本来備わっている自己複製プログラムの存在を示している。
ローヤルゼリーは、セイヨウミツバチ(Apis mellifera)の女王蜂になるべき幼虫に与えられる食物であるが、哺乳類にも作用して、その寿命、稔性、再生に影響を及ぼすことが知られている。MRJP1(Major Royal Jelly Protein 1、別名ロイヤラクチン)はローヤルゼリーの機能成分であり、これまでの研究では、セイヨウミツバチ以外の種に対する影響を調節することが明らかにされており、保存された経路を活性化する可能性のあることが示唆されている。ところが、こうした保存された細胞内シグナル伝達経路の特徴は未解明のままとなっている。
今回Kevin Wangたちの研究グループは、ロイヤラクチンが、マウスES細胞の多能性遺伝子ネットワークを活性化し、これらの細胞を、通常必要な他の因子がなくても、培養で維持できることを明らかにした。また、ロイヤラクチンで培養されたES細胞をマウスの胚盤胞に注入すると、生育可能なマウスが作り出され、このES細胞がマウスの生殖細胞に組み込まれた。さらに、Wangたちは、ロイヤラクチンの哺乳類における構造類似体を同定して、Reginaと命名し、Reginaにはロイヤラクチンに似た機能的能力があり、Reginaが培養中のマウスES細胞のアイデンティティーを維持できることを明らかにした。このことは、ミツバチからヒトまで進化的に保存された経路があり、それぞれの種で独自の過程を制御している可能性のあることを示唆している。今後の研究は、Reginaが哺乳類細胞において果たす役割の解明に役立つだろう。
doi:10.1038/s41467-018-06256-4
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