Research Press Release

【気候変動】グリーンランド氷床の融解水の流出が加速している

Nature

2018年12月6日

グリーンランド氷床の融解強度と融解水の流出に関する数世紀にわたる連続分析の結果を報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、最近のグリーンランド氷床の融解速度が、過去と比べて上昇していることを明らかにしている。

グリーンランド氷床は、今日の海水準上昇に大きく寄与しているが、現在の融解速度が異常かは分からない。その理由は、観測記録が作成されるようになってから日が浅いことと、先行研究で氷床全体の分析が行われていなかったことにある。

今回、Luke Truselたちの研究グループは、グリーンランド西部の氷床コアの融解層を分析し、約350年にわたる記録を作成した。Truselたちは、この融解層の記録を現代のグリーンランド全体における広範な融解過程と結び付け、両者の関係を用いてグリーンランド全体の記録を1650年までさかのぼって、近年のグリーンランド氷床の融解と融解水の流出が過去の変動幅を超えて加速していると報告している。

Truselたちは、グリーンランド氷床の融解が加速し始めたのは、産業革命後の北極温暖化が始まった19世紀中頃であることも明らかにした。また、2012年のグリーンランド氷床の表面の融解は、過去350年で最も大規模なものであり、氷床コアの直近10年間(2004~2013年)の部分は、記録のある他のどの10年間よりも融解の持続性が高く、融解速度も高かったことが明らかになった。この分析結果は、融解速度が気温の上昇に対して非線形的に上昇することを示している。そのため、過去の小規模な温暖化事象は氷床の融解に全く、あるいはほとんど影響を与えなかったかもしれないが、今後は同程度の温暖化事象でも、氷床の融解の規模がかなり大きなものとなる可能性がある。

doi:10.1038/s41586-018-0752-4

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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