【医学研究】ヒヒに移植されたブタの心臓を長期間機能させる方法
Nature
2018年12月6日
遺伝子組み換えを行ったブタの心臓をヒヒに移植する実験で、処置を改善することで移植された心臓が長期間にわたって機能するようになったことを報告する論文が、今週掲載される。この方法は、さらなる検証を必要とするが、良好な結果が一貫して得られた初めての方法であり、臨床現場でブタの心臓をヒトの患者に使用することへ大きな一歩が踏み出されたと言える。
末期の心不全患者に残された唯一の長期的治療介入が心臓移植なのだが、移植に利用できるドナー臓器の供給量は、臨床施設が必要とする量に満たない。代替臓器として遺伝子組み換えを行ったブタの心臓を用いることが、ドナー臓器不足を解決する1つの手段として提案されており、ヒヒモデルを用いた前臨床試験が行われてきた。しかし、これまでのところ、生命維持のためにブタの心臓を移植されたヒヒにおいて、移植手術後の生存期間が最も長かったのは57日(1例)だった。
今回、Bruno Reichartたちの研究グループは、生命維持のためにヒヒに移植されたブタの心臓の長期生存を繰り返し実現できることを実証した。この臓器移植実験で、Reichartたちは、連続する3つの被験個体グループ(ヒヒ計16頭)で処置の改善を行った。そして、このうち第3のグループでは、移植過程で(心臓を氷上静置するのではなく)心臓に血液循環によって絶えず酸素を送り込み、ヒヒの血圧を低下させて移植された臓器が有害なレベルまで肥大しないようにし、細胞の増殖を抑制することが知られる化合物を用いて、長期間の生存に成功した。第3グループの5頭のうち4頭は、少なくとも90日(実験が実施された期間)にわたって健康な状態を保っており、このうち1頭は、移植後195日にわたって良好な健康状態を維持していた。
doi:10.1038/s41586-018-0765-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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