【感染症】交通事故死したアナグマの研究が英国におけるウシ結核の流行に新たな光を当てる
Scientific Reports
2018年12月7日
2014~2015年に英国チェシャー州で路上死して回収された94体のアナグマのサンプルの約5分の1から、ウシ結核の原因菌であるウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)が検出されたことを報告する論文が、今週掲載される。チェシャー州は、英国内でウシ結核が流行する地域の外縁に位置すると考えられていたが、2010年以降、ウシ結核の発生率が上昇していた。著者たちは、今回の研究で流行拡大の原因を突き止められなかった点も指摘している。
今回Elsa Sandoval、Malcolm Bennettたちの研究グループは、2014~2015年にチェシャー州で交通事故死したアナグマの死体を地元の農業従事者、獣医師、野生生物保護グループ、および政府機関のネットワークを通じて収集して調べた。その結果、アナグマの死体の21%(94体のうちの20体)からウシ型結核菌が検出された。これに対して1972~1990年にチェシャー州で実施された路上死したアナグマの調査でウシ型結核菌を保有していたのは、研究サンプル計389体のうち1体(0.26%)のみだった。
今回の研究では、チェシャー州でウシ型結核菌を保有するアナグマの割合が、ウスターシャー州(18%)とグロスターシャー州(20%)に近いことも判明した。両州は、ウシがウシ型結核菌に感染するリスクの高い州と考えられており、英国南西部以外の地域に流行が拡大していることが示唆されている。
今回の研究結果は、アナグマとウシの両方が、地理的に同じように拡大しているウシ結核の流行を担っている可能性を示唆しているが、著者たちは、ウシ型結核菌の異種間感染伝播の方向性(アナグマからウシへの感染伝播か、その逆か)を解明できなかった点を強調している。チェシャー州などの地域におけるウシ型結核菌の感染伝播を詳しく解明するためには、さらなる研究が必要となっている。
doi:10.1038/s41598-018-35652-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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