過去のサンゴ白化現象がその後の熱波による影響に関係している
Nature Climate Change
2018年12月11日
2017年の熱波がグレートバリアリーフに及ぼした影響は、2016年の熱波の影響に依存していたことを報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、海洋熱波がサンゴ礁に及ぼす影響が過去の温暖化現象に影響される現象[生態学的記憶(ecological memory)として知られる]の度合いに関する手掛かりをもたらしている。
今回Terry Hughesたちは、航空観測の結果を分析し、グレートバリアリーフの全長に沿って個々のサンゴ礁の白化の深刻度を評価した。著者たちは、2016年には1135か所、2017年には742か所のサンゴ礁について白化の深刻度を調査し、そのうち606か所はいずれの年も調査対象である。Hughesたちは、これらのデータと人工衛星によるグレートバリアリーフ全体の海面水温の測定結果を組み合わせた。この海面水温のデータによれば、2017年は約80%のサンゴ礁において、夏季の海面水温が前年に比べてより高く、あるいはより長期間継続していた。次に、Hughesたちは一般化線形モデルを使って、2017年に、サンゴ礁の白化に対する耐性がそれまでの年より高くなったことを明らかにした。2016年の熱波から2017年の熱波の間に、世界最大のサンゴ礁系であるグレートバリアリーフの約3分の2が影響を受けていた。
2016年の熱波の生態学的記憶は、翌年の2017年にさらに激しい温暖化が起こったにもかかわらず、気候の影響を解明する上で個別の事象を調べるだけでは不十分なことを実証している。Hughesたちは、気候を原因とする事象の発生頻度が高まっており、連続して起こるかく乱の相互作用を調べることが不可欠だと結論付けている。
doi:10.1038/s41558-018-0351-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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