【栄養】祖父が子どもの頃に食料を十分に得ていたかが男孫の死亡リスクと相関している
Nature Communications
2018年12月12日
父方の祖父が思春期前の成長が鈍化する時期(9~12歳)に食料を十分に得ていたかが、その孫の死亡リスクに関連していることを明らかにした論文が、今週掲載される。ただし、この関連が見られるのは、男孫の場合のみである。今回の3世代にわたる大規模コホート研究は、先行研究をさらに発展させるものであり、ある世代における環境曝露がその後の世代の健康転帰に影響を及ぼす可能性があるとした仮説を裏付けている。ただし今回の研究では、この関係を生じさせる機構は突き止められていない。
今回、Denny Vageroたちの研究グループは、「ウプサラ多世代出生コホート研究」の対象となったスウェーデン国内の地域における1874~1910年の作物の収量データを集めた上で、このデータを用いて、祖父母(9039人)が思春期前の成長が鈍化する時期に食料を取得するのがどれだけ難しかったかを推定した。Vageroたちは、これらの祖父母の孫(1万1561人)の1961~2015年の死亡データを用いて、父方の祖父の成長の鈍化する時期に作物の収量が例年よりもはるかに多かったことが、その男孫の総死亡率およびがんによる死亡リスクが高いことと相関していることを明らかにした。ただし、この関連は、女孫の場合には見られなかった。
以上の結果は、複数世代にわたるエピジェネティックな遺伝(環境曝露の影響が生殖細胞系列のエピジェネティックな修飾を介して遺伝すること)という考えを支持するが、この仮説の間接証拠でしかない。祖父の食料の入手とその男孫の死亡リスクとの直接的な因果関係を断定するには、生殖細胞系列のエピジェネティックなマーカーへの直接的な影響、そしてそうしたマーカーの3世代にわたる伝播が今後の研究によって示される必要がある。
doi:10.1038/s41467-018-07617-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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