【気候科学】地球温暖化によって太平洋東部のエルニーニョの変動性が増大する
Nature
2018年12月13日
太平洋東部のエルニーニョの変動性が地球温暖化によって増大するという研究結果を報告する論文が、今週掲載される。この変動性の増大により、今後、極端な気象現象が頻繁に起こるようになる可能性がある。
エルニーニョ/南方振動(ENSO)は、地球上で最も影響力の大きな気候変動で、太平洋東部のエルニーニョは、太平洋東部地域の洪水と太平洋西部地域の干ばつに関連している。しかし、太平洋東部の海面水温の応答(太平洋東部のエルニーニョの状態を判断する上で重要な特徴)に関して、モデル間の一致が見られないため、地球温暖化がENSOにどのような影響を及ぼすのかは解明されていない。また、ほとんどの先行研究では特定の地理的領域における変化が評価されてきたが、明確な結論が出ていない。
今回、Wenju Caiたちの研究グループは、第5期結合モデル相互比較計画(CMIP5)の17の気候モデルを調べて、今後の地球温暖化による太平洋東部のエルニーニョの変化を評価した。Caiたちは、それぞれのモデルの異常中心(気温の変化が最も極端な地点)を追跡調査し、ほぼ全てのモデル(88%)で、異常中心での海面水温の変動幅が大きくなると予測されたことを報告している。この結果は、現時点(1900~1999年)から予測された未来(2000~2099年)までに、太平洋東部のエルニーニョによる海面水温の変動性が全体平均で15%増大したことに相当する。
このような海面水温の変動性の増大は、「強烈な」太平洋東部のエルニーニョ現象(大規模な海面水温の異常に相当する)の発生件数が増えることを示唆しており、Caiたちは、その結果として今後我々は、極端な気象現象の発生件数が増えることを当然予想すべきだと結論付けている。
doi:10.1038/s41586-018-0776-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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