【動物学】ほんの一瞬、全ての構成要素がそろうと完成するハチドリの求愛
Nature Communications
2018年12月19日
雄のフトオハチドリの求愛ディスプレイでは、素早い動きと雑音、視覚シグナルが高度に同期して300ミリ秒以内(ヒトのまばたきの所要時間に相当)に一気に起こることを報告する論文が、今週掲載される。
雄のフトオハチドリは、垂直に約30メートル上昇してから急降下するというU字型の飛行を連続的に行うことで雌に対する求愛ディスプレイを行い、この急降下を行う時に、尾を使って急降下に特異的な機械雑音を生じさせるとともに、喉の虹色の斑点から視覚シグナルを発する。しかし、この求愛ディスプレイの際に求愛行動の構成要素がどの程度同期しているのかは分かっていない。
今回、Benedict HoganとMary Caswell Stoddardが、野生の雄のフトオハチドリによる48回の急降下の動画と音声を記録し、そこにマルチアングル映像技術を適用して、雌のフトオハチドリが急降下中の雄の喉の虹色の斑点をどのように認識するのかを調べた。その結果、雄の急降下中に雌が認識する音と色が著しく変化することが明らかになった。著者たちは、雌のフトオハチドリが、近づいてくる雄の音の周波数が6.5%増加し、離れていく雄の周波数が4%減少することをドップラー効果によって認識していると推定しており、この変化が急降下の速度と軌跡に直接関連していると結論付けている。また、急降下の幾何学的形状と高速性を合わせて考えると、雄の喉の斑点が雌に見えるのはほんの一瞬(約120ミリ秒)で、雌が認識する色は赤から黒に急速に変化する。
著者たちは、この知見によって、動物のディスプレイを調べる際に運動と方向性を説明することの重要性が明確になったと主張している。
doi:10.1038/s41467-018-07562-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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