Research Press Release
繊維芽細胞を心筋細胞へ直接転換する
Nature Cell Biology
2011年1月31日
分化した細胞を再プログラム化して多能性をもつ状態に戻すのに用いられる因子を使って、マウスの繊維芽細胞を、自発的収縮を行う心臓細胞に直接転換する方法が報告された。この方法は、心臓の機能不全を調べる実験に使える細胞を作り出す、より時間のかからない方法の1つとなりそうだ。
幹細胞研究分野では、心関連疾患の基盤解明のために、患者から容易に単離できる皮膚細胞などの細胞から収縮を起こす心筋細胞を作出する試みが多数行われてきた。哺乳類の心臓は自己再生能力をほとんどもたないので、こうした細胞を作製すればいずれは細胞移植に使えるかもしれない。
S Dingたちは、マウスの繊維芽細胞を使い、細胞を未分化状態に戻すために使われる因子を短時間発現させた後に、心臓形成を誘導する分子を含む特定の条件下で培養した。繊維芽細胞は多能性細胞に再プログラム化されることなく、心臓系列の細胞に転換されて、自発的収縮を行う分化した心筋細胞集団が形成された。細胞が再分化して心筋細胞になる前に、まず多能性細胞へと戻す必要がなくなったことで、この方法は細胞レベルで心臓の機能不全を調べるのに使えそうな細胞を手に入れる手っ取り早い方法となると考えられる。
doi:10.1038/ncb2164
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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