【気候科学】化石燃料インフラの段階的廃棄をすぐに始めれば、産業革命以降の気温上昇を摂氏1.5度未満に抑えられるかもしれない
Nature Communications
2019年1月16日
耐用年数に達した化石燃料インフラの段階的廃棄に直ちに着手すれば、産業革命以前との比較で全球平均気温の上昇を摂氏1.5度未満に抑制できる確率が64%となることを明らかにしたモデル研究について報告する論文が、今週掲載される。この研究では、気候変動緩和策の実施を2030年まで遅らせると、たとえ化石燃料インフラの除却率を加速度的に上昇させたとしても、気温上昇を摂氏1.5度未満に抑制できる確率は低下することが示唆されている。
今回、Christopher Smithたちの研究グループは、さまざまなシナリオの下で単一の気候モデルを用い、2018年末から二酸化炭素の排出量の削減がほぼ線形速度で進み、40年後にほぼゼロになる場合に、全球的気温上昇に何が起こるのかを調べた。これらのシナリオでは、化石燃料を用いる発電所や自動車、航空機、船舶、産業基盤が耐用年数に達すると、炭素排出のない代替手段に置き換えることとされた。
Smithたちは、今回の研究結果を基に、既存の二酸化炭素排出型のインフラの段階的廃棄を直ちに開始すれば、温暖化による気温上昇を摂氏1.5度未満に抑えられる確率が64%となるが、そうした行動の開始が2030年まで遅れると、達成確率が50%を下回るという考えを示している。ただし、今回の結果は、今後数十年間に、例えば永久凍土が大量に融解するなど、気候変動の転換点を大きく超えることはないという前提に基づいている。
doi:10.1038/s41467-018-07999-w
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