【がん】脳腫瘍の液体生検を改善する
Nature
2019年1月24日
脳脊髄液(CSF)中の腫瘍由来DNAの検出によって、一部の神経膠腫における腫瘍のプログレッションを追跡調査できることを報告する論文が、今週掲載される。神経膠腫は、成人のがん性脳腫瘍で最も一般的なものだ。この液体生検法は、神経膠腫の分類のための脳組織採取に代わり得る、侵襲を最小限に抑えた方法となり、神経膠腫患者の治療指針の一助となる可能性がある。
神経膠腫のプログレッションを監視する際には、繰り返しの生検が必要なことがある。神経膠腫の過程でそのゲノムが変化するためだ。腫瘍DNAを解析するために液体生検を行うことは、脳腫瘍組織を外科的に切除するよりも魅力的な方法だが、こうした遺伝情報を血液試料から検出することは難題となっている。今回Ingo Mellinghoffたちは、CSFが神経膠腫患者の腫瘍由来DNAを広範に取得できる可能性のあることを実証した。
Mellinghoffたちは、腰椎穿刺によって85人の神経膠腫患者のCSFを採取した。その結果、ほぼ半数(42人)のCSFから腫瘍由来DNAが検出され、腫瘍のサイズ、プログレッション、および疾患転帰との関連が認められた。また、CSFから循環血液中の腫瘍DNAが検出された患者の死亡リスクは、そうでない患者の4倍だった。Mellinghoffたちは、CSFから検出された遺伝物質に腫瘍ゲノムが正確に示されていると指摘している。また、全ての神経膠腫でCSF中から腫瘍由来DNAが検出されるわけではないと付言する一方で、腫瘍由来DNAの存在が脳腫瘍の進行の早期指標となる可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41586-019-0882-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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