CRISPRを使ったバナナの育種
Communications Biology
2019年1月31日
バナナの近縁種であるプランテンに内在するバナナストリークウイルスを除去するための有効な方法について報告する論文が、今週掲載される。この方法にはCRISPR技術が用いられており、プランテンの成長と収量を向上させるのに役立つ可能性がある。
バナナとプランテンは、熱帯と亜熱帯の国々における重要な主食作物だ。こうした作物の健全な成長と高収量を確保する上で、病虫害への抵抗性が向上した品種を開発することは非常に重要だ。バナナストリークウイルスは広範囲に分布する病原体で、感染した植物は最終的に死滅することもある。このウイルスは、自らのDNAをバナナのBゲノムに組み込むことで作用する。植物が干ばつや熱波などによってストレスを受けると、ウイルスのDNAが機能性のウイルス粒子を産生し、最終的に病徴を引き起こす。そのため育種家は、バナナ作物の改良を行う際にBゲノムを持つバナナ(野生種バナナMusa balbisiana など)を避ける。M. balbisianaには、耐寒性、強い根系、ストレス耐性などの有益な属性があるにもかかわらずである。
今回Jaindra Tripathiたちの研究グループは、CRISPR/Cas9系を用いて、フォールスホーンプランテンの一種であるGonja ManjayaのBゲノムに含まれるウイルスDNAを不活化した。Gonja ManjayaはMusa属のフォールスホーンプランテン品種で、東アフリカと中央アフリカで広範に栽培されている。Tripathiたちは、干ばつストレスにさらす実験を行い、ゲノム編集を受けていない個体と比較したところ、ゲノム編集を受けた個体の75%にバナナストリークウイルスの徴候が全く見られず、ウイルスDNAが不活化されたことを確認した。
Tripathiたちは、バナナ作物とプランテン作物を強靭化し、Bゲノムが改変された新しい雑種を開発するために、この方法を利用できる可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s42003-019-0288-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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