腸内微生物とメンタルヘルスとの関係が判明
Nature Microbiology
2019年2月5日
特定の腸内細菌がうつに関連することが、それぞれ1000人以上からなる2つの独立したヒト集団を調べて明らかになったことを報告する論文が、今週掲載される。この知見はバイオインフォマティクス解析によって得られたもので、実験によって確かめる必要はあるが、微生物相と脳の関係を調べる今後の研究を方向付け、加速させるかもしれない。
腸内の微生物代謝とメンタルヘルスとの関係は、微生物相研究の複雑な対象課題である。腸内微生物相と脳のコミュニケーションについては、主として動物モデルで研究が行われており、ヒトでの研究は後れを取っている。
Jeroen Raesたちは今回、微生物相の特性が生活の質(QOL)やうつとどのように関連しているかの研究を行った。Flemish Gut Flora Project(FGFP)に参加した1054人について、微生物相データを、うつに関する自己申告データおよび一般開業医による診断データと組み合わせて解析したところ、メンタルヘルスに正の関連あるいは負の関連を持つ特異的な腸内細菌グループが見つかった。うつ病患者では、恒常的にCoprococcus属とDialister属の細菌群が乏しく、このことはFGFPとは別のコホート研究Dutch LifeLinesDEEPに参加した1063人でも確かめられた。
またRaesたちは、ヒトの神経系と相互作用する可能性のある分子の生産能力や分解能力に基づいて、腸内微生物相の機能のカタログを作成した。このカタログを用いて前述の研究参加者の一部(治療抵抗性の大うつ病患者と、対照となる健常者を含む)から得た糞便メタゲノムのデータを解析した結果、腸内細菌相の潜在的なドパミン代謝物合成能と精神的QOLに正の関連があることが明らかになった。
doi:10.1038/s41564-018-0337-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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