【気候変動】氷床の融解が気候に大きな影響を及ぼす可能性
Nature
2019年2月7日
南極氷床とグリーンランド氷床の融解が、全球気候システムに間接的な影響を及ぼし、気象の変動が大きくなり、融解がさらに進む可能性のあることを報告する論文が、今週掲載される。同時掲載される別の論文では、論争の的となっている南極での氷崖の暴走的崩落過程を調べた結果が報告されている。
21世紀末には、全球気温が産業革命以前と比べて摂氏3~4度上昇して、氷床の融解が加速され、全球的な海水準上昇が引き起こされる可能性がある。しかし、グリーンランド氷床と南極氷床の融解が組み合わさって気候に及ぼす影響については、広く研究されてこなかった。
今回、Nicholas Golledgeたちの研究グループは、人工衛星による最近の氷質量の変化の測定結果を用いて、南極氷床とグリーンランド氷床の融解とその影響の可能性についてのシミュレーションを精緻化した。その結果、融解水が増加するために、今後数十年以内に大西洋の南北方向の鉛直循環(熱帯域から北大西洋へ暖水を輸送する)が大きく減速することが分かった。また、気候の年々変動が、一部地域で最大50%大きくなる可能性があることも判明した。南極の融解水によって海洋表層に淡水レンズが形成され、これによって湧昇する暖かい海水が横方向に広がり、南極の水面下の氷の融解がさらに進むと考えられる。
一方、Tamsin Edwardsたちの研究グループは、過去(300万年前から現在まで)の海水準上昇を分析して、論争の的となっている「海氷崖不安定性」仮説が裏付けられるかどうかを調べた。この仮説によれば、海水準から100メートル以上の高さの氷崖が露出すると、不安定になり、崩落して、氷河が急速に後退する。Edwardsたちは、過去の海水準上昇を説明する際にこの仮説を用いる必要がないことを見いだした。また、さまざまなモデルでこの仮説を考慮せずに海水準上昇に対する南極の寄与分を計算したところ、温室効果ガス濃度が非常に高いシナリオ(RCP8.5)下で、2100年までに海水準上昇が39センチメートルを超える確率はわずか5%であることが分かった。これら2編の論文とも、RCP8.5シナリオにおける海水準上昇に対する南極の寄与分は14~15センチメートル程度である可能性が最も高いと予測している。
doi:10.1038/s41586-019-0901-4
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