【医学研究】再プログラム化したヒト膵細胞でマウスの糖尿病を軽減
Nature
2019年2月14日
ヒトの膵α細胞と膵γ細胞を再プログラム化して、インスリンの産生を可能にしたことを報告する論文が、今週掲載される。通常は、膵β細胞だけがインスリンを産生する。この再プログラム化細胞を糖尿病マウスに移植すると、糖尿病の症状を軽減できることも明らかになった。
ストレスを受けた細胞が別の種類の細胞に変化することは、動物の再生戦略として広く見られるが、哺乳類についての記録は少ない。マウスの場合、インスリンを分泌する膵島β細胞が破壊されると、膵β細胞以外の膵細胞がインスリンを産生できるようになる。ヒトの膵細胞がこれと同じ可塑性を示すかどうかは分かっていない。
今回、Pedro Herreraたちの研究グループは、糖尿病のドナーと糖尿病ではないドナーからそれぞれ採取した膵α細胞と膵γ細胞を再プログラム化し、グルコースに応答してインスリンを産生するようになるかを調べた。Herreraたちの報告によれば、2つの重要な転写因子(Pdx1 とMafA)の発現増加によって、これらの膵細胞がインスリンを産生できるようになった。この結果は、ヒトの成熟した膵β細胞以外の膵細胞に可塑性があることを示す初めての直接的証拠だ。
次にHerreraたちは、これらのインスリン産生ヒト膵α細胞を使って、インスリンを分泌する膵β細胞を欠損した1型糖尿病マウスの臨床症状を緩和できるかを調べた。複数のドナーから採取したインスリン産生膵α細胞をマウスに移植したところ、マウスの耐糖能とインスリン分泌値、血糖値が全て正常化した。また、移植した膵α細胞は、移植後最長6か月インスリンを分泌し続けた。
この知見は、ヒト膵細胞の可塑性を示す概念的証拠となっている。この可塑性を促進して欠損した細胞集団と置換することができれば、糖尿病やその他の変性疾患の治療法候補となる可能性がある。
doi:10.1038/s41586-019-0942-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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