【医学研究】マウスが十分な睡眠を取ればアテローム性動脈硬化症のリスクは低下する
Nature
2019年2月14日
マウスにおいて、睡眠がアテローム性動脈硬化症(動脈の内側にプラークが蓄積する状態)のリスクに影響を及ぼす機構を説明した論文が、今週掲載される。この知見は、十分な睡眠と心血管の健康との間に因果関係のあることを示唆しているが、ヒトにおいて再現される必要がある。
アテローム性動脈硬化症は心疾患のありふれた原因の1つであり、心疾患リスクの上昇などのさまざまな健康状態は、睡眠の減少や質の悪い睡眠と関連付けられてきた。しかし、睡眠が心血管の健康に影響を及ぼすと考えられる細胞機構や分子機構については、ほとんど分かっていない。
今回、Filip Swirskiたちの研究グループは、アテローム性動脈硬化症を発症しやすい遺伝子改変マウスにおける慢性的な睡眠断片化(中途覚醒を伴う睡眠や睡眠不足)の影響を調べた。その結果、睡眠断片化を長期にわたって経験したマウスは、対照群と比較して、不安が強く、炎症細胞の産生量が多く、アテローム性動脈硬化病変が大きくなることが分かった。また、このマウスは、脳の外側視床下部領域におけるヒポクレチン(覚醒を調節する神経ペプチド)の産生量が低下していた。
Swirskiたちは、ヒポクレチンがCSF1というシグナル伝達タンパク質を介して免疫細胞を含む血液細胞の産生を制御することを報告しており、睡眠不足のマウスにおいて免疫細胞の産生量が増加し、アテローム性動脈硬化の進行が加速したという観察結果の原因が、ヒポクレチン濃度の低下とCSF1濃度の上昇だと結論付けている。このマウスのヒポクレチン濃度を元に戻したところ、アテローム性動脈硬化が軽減した。Swirskiたちは、睡眠が乱されなければ、視床下部から放出されるヒポクレチンが適切なレベルに維持され、心血管の健康を守る効果があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41586-019-0948-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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