Research Press Release
【遺伝学】柑橘類が酸っぱくなる仕組み
Nature Communications
2019年2月27日
柑橘類の果物の酸味に関連する遺伝子が同定されたことを報告する論文が、今週掲載される。
果物の酸味は、液胞(植物の細胞内に存在する膜に包まれた小器官)の酸性度に依存している。大部分の植物細胞において、液胞は、水素イオンが注入されているために弱酸性だが、特定の果物の果汁を生成する細胞では、この注入プロセスが増強されて、液胞が強酸性になっている。しかし、これがどのようにしてそうなるのかは、これまで解明されていなかった。
今回、Ronald Koesたちの研究グループは、柑橘類(レモン、オレンジ、ザボン、ライム)の酸っぱい品種と甘い品種を比較した。その結果、酸っぱい品種では、注入プロセスを増進させて、液胞中の水素イオンの濃度を上昇させる輸送体タンパク質をコードする2種類の遺伝子(CitPH1とCitPH5)が発現していることが分かった。一方、甘い「無酸」種では、この2種類の遺伝子の発現は低かった。なお、この輸送体タンパク質は、Koesたちが先行研究でペチュニアの紫の花色の基盤となっている輸送体タンパク質として同定したものと同種のものだった。
Koesたちは、今回の知見は果物の育種において、味の良い品種をより迅速に選抜する上で役立つ可能性があるとの見解を示している。育種家は、幼樹の成熟を待たずに、そのDNAを検査することで、果実の酸っぱさを予測できるかもしれない。
doi:10.1038/s41467-019-08516-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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